24.

 

「あれ?成田さんだー!!うわー、すごい久しぶりだね!」

 高校3年の時のクラスメートと手を取りあってはしゃぐ。

「今ね、同窓会の日取り決める相談とか、みんなでしてたんだよ」

「え?みんなって誰?」

きょろきょろして、周りを探す。成田が渡ってきた横断歩道を3人の男女が渡って自分たちの方に近づいて来ていた。

「成田ぁ、急に走りだすなよ、ったく」

 今風の格好をした男が成田に口を開いた。見覚えがあるけれど、名前が思い出せない。

「だって河野さん見つけたんだもん!!ほら、覚えてるでしょ?」

「あ!本当だ、緋天さんだ!うわ、久しぶり」

「わーい、緋天ちゃんだ!成田、お手柄だね!」 

後ろから続いてきたもう一人の男が自分を見て言う。クラスの委員長をしていた彼と。更に続いて副委員をしていた同級生が笑って言った。

「細川さん!!と、委員長!と、えっと・・・誰だっけ???」

「うわ、ひでぇ。おれだよ、おれ。山岸知樹クン」

 本人の申告にも覚えのない名前。素直に謝る。

「ごめん。名前知らなかった・・・」

「あはは!河野さんウケる!!」

「でも河野、すっげえ変わってねえ?めちゃくちゃかわいいんだけど」

「こら、そこ!いきなり緋天ちゃんを口説かない!!」

「緋天さんは前からかわいかったよ?」

 さらっとそう言いきる委員長を全員遠巻きに見る。そういえば、彼はいつもそんな風に自分を持ち上げていた。

「おいー、マサ君や。お前も口説くなよ。・・・だけどそうかもなー。高校の時ってマサも河野も優等生組だったじゃん?おれみたいな流行を追いかけてた奴らって、ばっちり化粧してるような、同じ種類のちゃらちゃらしてる女ばっか見てたしなあ。ハナから頭いいグループの奴の事、バカにして見てた」

 しみじみうなずいて、山岸が自分を見る。

「それにしても、河野、髪伸びたなー。すっげえさらさら」

 そう言って、手を伸ばした彼は、こちらの髪を一房手にとって眺めた。

「あ、こら!知樹!勝手に女の子の髪にさわるなよ。緋天さん、大丈夫?」

「う、うん。平気」

「緋天ちゃん、ダメだよ、厳しく言わなきゃ馬鹿には判んないから」

 

 

「ねえねえ。あの人、河野さんの彼氏?始め見た時、一緒にいたよね」

 10メートル程先に進んだ蒼羽が、自分達を見ていた。遠くからのその視線は、苛立っているように思えた。

「ごめんね、仕事の途中だったの忘れてた。あの人は上司だよ」

「え!!マジで?超かっこいいよ!いいなー緋天ちゃん」

「あー、緋天さん、引き止めてごめんね」

「ううん。じゃあね。もう行かなきゃ」

「げ!なんかシカトして先に歩いてるぜ、あいつ」

 山岸の言葉に振り返ると、蒼羽が背中を向けて去って行くのが見えた。彼を怒らせてしまったのは一目瞭然。4人を背に走り出す。

「緋天ちゃん!同窓会、7月に予定してるから!」

「うん!ありがとう。じゃあねー」

 一瞬振り返って手を振って笑って。蒼羽を追いかけた。

 

 

 

 

「やべえ。河野のやつ、マジでかわいかったよなあ」

 緋天を見送って、うっとりした顔で山岸が口を開く。

「まだ言ってるよ、この馬鹿は。でも本当緋天ちゃんかわいかったねー」

「うんうん、髪伸ばしてたから、私も一瞬判らなかったもん」

盛り上がる3人の中に、冷静な声が響く。

「でもさ、緋天さんボディーガード連れてたじゃん」

「なんだよマサー、熱いおれのハートに水差すなよ。第一、河野が上司って言ってたじゃねーか。違うのか?」

 山岸が不満そうに言う。

「いや、そうなんだけどさ。ほら、僕の立ち位置からだと。ここで立ち止まった時、始めからあの人がずっと緋天さんの方見てるのが目に入ってたんだよ。成田さんが言い出す前からずっと。知り合いかな、って思ってたら、知樹が緋天さんの髪さわった時に、ムッとした顔してたんだよね。それで待つのやめて先に行っちゃたんじゃない?」

「うわー、あんた冷静に何見てんのよ。でもそれ判る。だってあたしが河野さん見つけた時にね、すっごい仲良さそうに見えたんだー。だから彼氏?って聞いたの」

 成田の言葉に全員うなずく。

「ま、なんにせよ、知樹の態度があの人に火つけたと思うよ。どっちみち名前知らなかったぐらいだから初めから知樹の事、眼中にないって」

「あんたもでしょ?緋天ちゃん、『委員長』って言ってたよ、始め。名前忘れてたんじゃない?」

「う、やっぱそう思う?」

「あきらめろ、マサ。河野は我々、下々の男子は目に入らんのだぁ」

 

 

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