続・月夜のジレンマ おまけ
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以下、『続・月夜のジレンマ』おまけステージ(笑)となります。
ゲーム対決する前の、河野家でのお風呂場でのひとコマ。。。
琳瑛様からの頂き物イラストを見て、妄想が暴走した結果の小噺ですΣ(‘◇’*)
イラストページに飾ったシャボンなシンを先に見ることをオススメしますvv
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「あ、蒼羽さんあがったのね。じゃ、シン君入ってらっしゃい」
菜箸を持った緋天の母親が笑顔で自分を見て。
次々と出来上がる品を味見しているこの場所を離れるのは、少しだけ不満だ。
「シン」
「う、あー、うん」
皿を出して並べていた緋天に笑顔をみせてから、まだ湿り気の残る髪を拭く蒼羽が目線で促す。声はあくまでも静かであったが。それには逆らえず、大人しく廊下へ出た。
後ろで何か笑い声が漏れているような気もしたが、そこは聞こえない振りをして。
日本の住宅は小さい。
着替えを持ってから洗面所にたどり着いて、改めてそれを思った。まさかそれを緋天の家族の前で口に出すような真似は、さすがにしてはいけないと分かってはいたが、エレクトラムやオーキッドの屋敷とのあまりの違いに戸惑う。
頭からシャワーを浴びていると、背後のガラス戸が開く音。
「うわっ」
「ごめん、時間ないから一緒に入らせて」
風呂場だから、服を着ている方がおかしいのだけれど。
裸の司月が入ってきて、思わず声を上げてしまった。他人と入浴する経験はあまりないので、少々気恥ずかしい。しかもフェンネルの家のような大きな風呂場ならいいが、この極小住宅で。
「あと20分でご飯できるって」
何の戸惑いも見せない司月がタオルでボディーソープを泡立てる。
首から洗っていくそれを見て、ようやくこちらもシャンプーを頭につけた。
「つーか・・・意外。司月、筋肉ついてんのなー、オタクだと思ってたのに」
ついつい彼の体をちらりと見ていると、見事な腹筋。他にも肩やら腕やら、見ごたえがある。
物腰が柔らかいのと、その職業も耳にしていたから、こんな鍛えられた体だとは思いも寄らなかった。彼自身、見た目は細身だと言うのもあるかもしれない。
「オタクって・・・まあ否定はしないけど。これは剣道やってるからね」
自分の置かれた環境が環境だけに、周囲の人間は似たり寄ったり、体作りが資本だ。
まだ緋天の背丈にも追いついていない子供の体としては、羨ましくて仕方ない。
「ふーん・・・剣道ってあれだろ? あのサムライみたいなやつ」
頭に浮かんだ知識と、目の前の司月がどうも一致せず。
泡を流してから、もう一度その体に目をやる。そのままシャワーヘッドを彼に渡してやると、苦笑が返ってきた。
「外国育ちだっけ? なんか変な感じだな、剣道知らないのか・・・」
早く成長したい、と筋肉の見えない腹部を見下ろしていたら、ボディーソープが差し出される。
がしがしと男らしく頭を洗う司月を見て、ため息だけが出た。
「シンは学校どうしてるんだ?」
「ん?あー、適当に。・・・イギリスの行ったり、自主学習したり」
「・・・そうか」
隣に並んで座る彼の眉がしかめられたものの、それ以上何かを追及しようとしなかったので助かった。
「でも、オレさ・・・もう少しのんびりしようかなって」
「のんびりって?」
「ちょっと普通の子供の生活してみたい。今年はこっちにいてもいいかも」
壁に備え付けられた棚に、見覚えのある陶器の入れ物が並んでいる。
あれは、緋天の為に作られた香りが入ったものだ。欲しいと思っても簡単に手に入らない、ヘリオドールの手作りで、かなり値が張るものだときっと緋天は知らないだろう。
「なんか良くわかんないけど・・・遠くに行かないなら、緋天が喜ぶと思うよ」
狭いバスタブ内で体を丸めていると、なんだか本当に普通の子供のような気がしてきた。
口に出した考えは、ここ最近、頭の中を行き来している。一直線に予報士の道へと進まずとも、寄り道をしてもいいのではないか、と以前なら思いつきもしなかった事が、とてもいい考えのような気がして。
「あ、日本の学校に行くならさ、剣道やってみれば? スポーツしたら背も伸びるし」
「うん。考えとく・・・」
天井の換気扇へと吸い込まれる湯気をぼんやり眺める。
随分とのんきな時間が、なんだか愛しく思えた。
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